特別名勝 栗林公園(りつりんこうえん)

国の特別名勝に指定されている文化財庭園の中で、最大の広さを持つ栗林公園は、高松藩主松平家の別邸として、歴代藩主が修築を重ね300年近く前に完成しました。緑深い紫雲山を背景に6つの池と13の築山を巧みに配し、江戸初期の回遊式庭園として、すぐれた地割り、石組みを有し、木石の雅趣に富んでいます。
春夏秋冬と四季折々の風物にも恵まれ、ここに咲く花々は、一千本もの見事な手入れ松とともに一歩一景といわれる変化に富んだ美しさを醸し出します。
文化財庭園では、日本最大の広さ!
  • 約75ヘクタールにもおよぶ栗林公園の敷地
    約75ヘクタールにもおよぶ栗林公園の敷地
紫雲山を「背景」にした大名庭園の魅力
栗林公園の平庭部の広さは、東京ドーム3.5個分にあたる約16.2ヘクタール。これだけでも大名庭園の中では最大級ですが、背景となっている紫雲山を含めた面積は、なんと東京ドーム16個分の約75ヘクタールにも及び、文化財に指定された庭園の中では日本一の大きさを誇ります。

大きな池の周りに起伏に富んだ地形で山や谷を表現し、池の周りを散策できるように造られた大名庭園は、広い園内を回りながら様々な景色を楽しむのが最大の魅力です。広大な敷地に6つの池、13の築山を有する栗林公園は、江戸時代初期の大名庭園として優れた地割り石組みを有する南庭、明治以降に近代的な公園として整備された北庭にわかれており、それぞれの多彩な景色をぜひ堪能してください。
 
COLUMN
背後の紫雲山に注目!
栗林公園の背景となっている紫雲山

背後の紫雲山に注目!

庭と紫雲山が一体化して、より奥深い景観に!

借景とは造園手法の一つで、庭園の外の山や樹木などの風景を庭の一部として取り入れるものです。借景の手法を取り入れた栗林公園では、庭園の西に位置する紫雲山が、背景として重要な役割を果たしています。
 

木石の雅趣に富んだ栗林公園
  • 仙磯と掬月亭
    仙磯と掬月亭
  • 掬月亭からの開放的な眺め
    掬月亭からの開放的な眺め
  • 【吹上】水の上を歩いて渡れる石
    【吹上】水の上を歩いて渡れる石
  • 自然との調和が感じられる庭園風県
    自然との調和が感じられる庭園風県
  • 掬月亭の庭
    掬月亭の庭
  • 涵翠池
    涵翠池
  • ライトアップされた根上り五葉松
    ライトアップされた根上り五葉松
  • ライトアップされた偃月橋は幻想的
    ライトアップされた偃月橋は幻想的
400年の歴史が息づく、大名庭園の傑作
16世紀後半には地元豪族・佐藤氏の小さな庭でしたが、1631年頃にこの地を治めた生駒家の家臣・西嶋八兵衛(にしじまはちべえ)によって手掛けられた治水工事により、広大な庭園の基礎が築かれました。庭造りは1642年から高松を治めることになった初代高松藩主・松平頼重(よりしげ)にも引き継がれ、100年以上経た1745年、5代藩主・頼恭(よりたか)の時代に完成。以来、歴代藩主が修築を重ね、明治維新に至るまでの228年間、高松松平家の下屋敷として使用されていました。

明治8(1875)年には県立公園として一般に公開され、昭和28(1953)年には名勝地として特に価値が高い「特別名勝」に指定されました。明治の終わりに発行された高等小学読本によると、栗林公園は「日本三名園」とされる水戸の偕楽園、金沢の兼六園、岡山の後楽園よりも「木や石に風雅な趣がある」と記されています。
COLUMN
「栗林」の名前は栗の木から?
園内には約1400本もの松。そのうち約1000本は手入れ松

「栗林」の名前は栗の木から?

不思議な名前の由来

1640年頃には「栗林」の名がすでに使われており、それから現在まで「栗林」の名が引き継がれてきました。「栗林(りつりん)」とありますが、庭園は造られた当初から松で構成されています。一説によると、栗の木が群生していたとか、種類に限らず木が生い茂った里山のことを中国では「栗林」と呼ぶなど、名前の由来には諸説あるようです。
 

江戸時代の作庭技術を駆使したまさに「お庭の国宝」!
  • 鑑賞ポイントは人それぞれ
    鑑賞ポイントは人それぞれ
  • 歩くだけで楽しめる、趣のある道
    歩くだけで楽しめる、趣のある道
  • 流れる水で暑い夏も涼やかな気分に
    流れる水で暑い夏も涼やかな気分に
  • 偃月橋と白鷺
    偃月橋と白鷺
  • 南国の木ソテツが一味違う情緒を演出
    南国の木ソテツが一味違う情緒を演出
  • 様々な薬草が栽培されていた百花園(薬園)跡
    様々な薬草が栽培されていた百花園(薬園)跡
  • 思わず歩きたくなる津筏梁(しんばつりょう)
    思わず歩きたくなる津筏梁(しんばつりょう)
  • 豊富な水を活かした桶樋滝
    豊富な水を活かした桶樋滝
「歩景」歩くたび、異なった風情を見せる景観美
「お庭の国宝」ともいえる「特別名勝」に指定されている庭園は全国で24箇所ありますが、うち13箇所は京都にあり、そのほとんどが一定の視点からの眺めを追求した「座観式」です。一方、栗林公園の作庭様式は、江戸時代に花開いた「池泉回遊式」と呼ばれるもので、広大な敷地に池泉や築山などを配し、園内を散策しながら移りゆく景観を楽しみます。その多彩さは、一歩歩くごとに風景が変わる「一歩一景」の魅力があるといわれています。
「侘び」「寂び」にも通じる四季折々の美しさ
  • 秋には鮮やかな紅葉も
    秋には鮮やかな紅葉も
  • ライトアップされた紅葉
    ライトアップされた紅葉
  • 雪の庭園もまた趣がある
    雪の庭園もまた趣がある
  • 白い雪が朱い梅林橋を一層引き立たせる
    白い雪が朱い梅林橋を一層引き立たせる
  • 桜と掬月亭
    桜と掬月亭
  • 夏に見ごろを迎えるハナショウブ
    夏に見ごろを迎えるハナショウブ
  • 朝もやが立ち込める風景は幻想的
    朝もやが立ち込める風景は幻想的
時間的変化が繰り広げる深遠なる世界へ
「一歩一景」の多彩な造形美をみせる栗林公園のもう1つの魅力は、築庭から400年近い歳月を経て現在に至る「エイジングの美」を堪能できることでしょう。四季折々の変化を見せてくれる自然の姿からも、移ろいゆく時間の変化を楽しむことができ、その深遠なる世界の奥には、目に見えるもの以外に美しさを求める「幽玄の美」が潜んでいます。
世界が認めた三つ星!
  • 歴代藩主が大茶屋と呼び、こよなく愛した掬月亭
    歴代藩主が大茶屋と呼び、こよなく愛した掬月亭
  • 江戸初期の大名茶室を今に伝える旧日暮亭
    江戸初期の大名茶室を今に伝える旧日暮亭
  • 和船と偃月橋
    和船と偃月橋
  • 紅葉シーズンには海外からのお客様も多い
    紅葉シーズンには海外からのお客様も多い
  • 桜と偃月橋
    桜と偃月橋
  • 静寂の夜に見る紅葉は別世界
    静寂の夜に見る紅葉は別世界
  • 満月が栗林公園を優しく照らす
    満月が栗林公園を優しく照らす
  • 散策していると立派なコイがお出迎え
    散策していると立派なコイがお出迎え
わざわざ旅行する価値がある場所
栗林公園は、フランスの旅行ガイドブック『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』において、「わざわざ旅行する価値がある」を意味する最高評価の三つ星に選ばれています。(平成21(2009)年 3月に初掲載。)
また、アメリカの日本庭園専門誌による「2011年日本庭園ランキング」においても、庭そのものの質の高さ、とりわけ松の美しさが評価され、第3位にランクされており、さらには平成28(2016)年6月に、「外国人に人気の観光スポット2016」で15位に選ばれています。

※「外国人に人気の観光スポット2016」は旅の予約から計画までをサポートする世界最大級の旅行サイト「TripAdvisor(R)」の日本法人であるトリップアドバイザー株式会社(本社:東京都渋谷区)が、トリップアドバイザー上に 2015 年 4 月から 2016 年 3 月の 1 年間に投稿された外国語の口コミ評価をもとに選出しています。

また、平成27(2015)年3月には、米国ハンティントン財団庭園と姉妹庭園提携を締結しました。
一肌、二振り、三姿
  • 大きく横に枝を広げた美しい姿
    大きく横に枝を広げた美しい姿
  • 迫力ある見事な枝ぶり
    迫力ある見事な枝ぶり
  • 生命力を感じる太い幹
    生命力を感じる太い幹
  • 堂々とした佇まいの根上り五葉松
    堂々とした佇まいの根上り五葉松
手入れ松の鑑賞ポイント
松の鑑賞ポイントは、「一肌(幹模様)、二振り(枝ぶり)、三姿(樹形)」といわれています。まず、肌とは幹の表面のこと。幹には樹齢の古さやごつごつした感じ、曲がった感じなど、自然の厳しさに耐え生き抜いてきた生命の力強さなどが現れています。次に、振りとは枝ぶりのこと。最後に、姿とは樹形のこと。松の立ち姿に生命の偉大さを感じられるようになったら、あなたはもう1人前の審美眼の持ち主です。

こうしたポイントを押さえておけば、栗林公園の散策はより一層楽しいものになります。亀を連想される石組みの上に、鶴が舞うような形をした松がそびえる「鶴亀松」は、園内一の美形といわれています。連続する造形美が見事な「箱松」は、その名の通り箱の形を装ったまさに芸術作品。将軍家から賜った盆栽が樹高約8m、幹回り約3.5mの巨木になった「根上り五葉松」は、存在感があります。これら栗林公園の三大松は必見です。
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お手植え松
皇族のお手植え松

お手植え松

皇族も来園した松の名所

栗林公園には多くの皇族の方々が来園されたときにお手植えされた松があります。
北庭には、昭和天皇、雍仁親王(秩父宮)、宣仁親王(高松宮)、エドワード8世、能久親王妃富子(北白川宮)が植樹された松が5本、掬月亭の南側には大正天皇がお手植えされた松があります。

多彩な庭の景色を作る
  • 獅子が後ろを振り返っているように見える「見返り獅子」
    獅子が後ろを振り返っているように見える「見返り獅子」
  • 牡丹の花に似ていることから牡丹石と呼ばれている
    牡丹の花に似ていることから牡丹石と呼ばれている
  • ここから栗林公園が始まったと言われている
    ここから栗林公園が始まったと言われている
  • 中国伝説の蓬莱島をイメージした仙磯
    中国伝説の蓬莱島をイメージした仙磯
  • 樹が化石化したという珪化木
    樹が化石化したという珪化木
  • 形がかわいらしい鶏林石
    形がかわいらしい鶏林石
石組みや置石
大名庭園では、池のまわりや島に珍しい形をした石を置いて、庭の景色を作っています。栗林公園では高松藩2代目藩主・松平頼常の時代に、日照り続きで苦しんでいた領民を助けるため、領民に木や石を持ち寄らせて、それと引き換えに食料などを与えたという逸話が残されています。このとき庭に置かれるようになったのが、獅子が後ろを振り返っているように見える「見返り獅子」や、ボタンの花に似た形をした「牡丹石」といわれています。

そのほかにも、栗林公園発祥の地といわれる室町時代に作られた「小普陀(しょうふだ)」は、中央部に110個、東側に15個、西側に17個の石で築山を形成していたり、南湖に浮かぶ「仙磯(せんぎ)」と呼ばれる島の1つは、仙人が住むという中国伝説の蓬莱島がモデルで、水墨画に描かれるような中国の険しい山並みを連想させてくれます。このように庭に置かれた石にも1つ1つストーリーがあり、それらを紐解いてみるのも楽しいですよ。
栗林公園の歴史
  • 御林御庭之図
    御林御庭之図
  • 栗林図
    栗林図

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